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先住民寄宿学校跡地から215体の遺体発見 

先住民寄宿学校跡地から215体の遺体発見
(C)theartnewspaper.com

 ずっと肌寒い日が続いていた西海岸地方ですが、6月に入って一気に気温が上がり、先週は体感温度が33度を越す真夏日となりました。その後また10度台に戻り、気温差で激しくて体調を崩しそうな日々を送っています。 
 
 さて先日、ブリティッシュ・コロンビア州カムループスにかつて存在した『レジデンシャル・スクール(先住民寄宿学校)』の跡地から、元生徒と思われる215体もの子供達の遺体が発見されるという衝撃的なニュースが発信されました。通常は『カナダにおけるCovid-19の最新情報』をお伝えしているのですが、今回はその件についてお話したいと思います。(『先住民寄宿学校』については、以前『先住民族迫害の歴史を考える『オレンジシャツ・デー』の記事で詳しくお話しましたので、そちらをご覧になってから本記事を読んで頂ければと思います。)

 先住民族を「白人社会に同化させる」事を目的として1870年代に創設された先住民寄宿学校。人権運動等により1996年にサスカチュワン州にあった最後の学校が廃止されるまでの約120年間に学校に送られた先住民族の子ども達は約150,000人。歴史的に正確な記録が残っていないものの、150,000人の内3,200人〜6,000人もの子供達が学校関連の死を遂げた、と言われてきました。決定的証拠が足りない事でうやむやになって来た事が、今回、カムループスの学校跡地から215名もの子供達の遺体が発見された事で決定的となった形です。

 今回、215体もの子供たちの遺体が発見された『カムループス先住民寄宿学校』は1890年に設立され、1969年まで運営されていました。一時は生徒数が500人を超える、カナダ最大の先住民寄宿学校でした。この学校へかつて強制的に送られた生存者は「英語を喋った事で50回の鞭打ちの体罰を受けた。」「常に空腹だった」と証言し、残っている記録や証言でも施設環境や衛生環境等に問題があり、病人が多く発生し、精神的、身体的、そして性的な虐待に生徒達が晒されていた事が分かっています。そして、かねてからこの学校跡地の敷地内に「墓標の無い墓がある」という噂がありました。しかし本当にそこに遺体があるかどうか、確証は無し。そこで今年5月、地中レーダー探査の専門家の力を借り、噂される場所での地中探査を行ったところ、今回の215体の遺体発見となりました。調査は6月現在も継続中です。

先住民寄宿学校跡地から215体の遺体発見
(C)theartnewspaper.com

 このニュースがカナダ国民に与えたショックはかなりのもので、各地で215人の子供達の魂を慰める為の追悼行事が行われました。各州議事堂は半旗を掲げて失われた子供達の命への哀悼の意を表し、バンクーバー美術館前には215足の子供靴が並べられました。この『215足の靴メモリアル』はカナダ全土に広がり、「罪を糾弾する」意味合いで、先住民寄宿学校を運営していた政府の建物の前、教育を担当したカトリック教会の前、そしてオンタリオ州議事堂前等に215足の子供靴が設置されました。また、BC州では教師達がオレンジ色のTシャツを着て授業を行いました。
 6月4日、9 名の国連人権専門家がカナダ、およびカトリック教会に徹底的な調査を実施するよう求め、発見された遺体の法医学的検査を含む、彼らの死を取り巻く状況と責任について本格的な調査を実施するよう要請しました。今後は遺体の発掘、検死、身元確認作業等が行われるようです。一日も早く、亡くなった子供達が家族の元へ戻れる日が来る事を願ってやみません。そしてこんな胸が張り裂けるような出来事は、今後一切起こってはならないと思います。


2021年06月08日(火) written by Saori from (カナダ)
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