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先住民族迫害の歴史を考える『オレンジシャツ・デー』

先住民族迫害の歴史を考える『オレンジシャツ・デー』
(C) www.orangeshirtday.org

 昨日、9月30日は『オレンジシャツ・デー』でした。これは公的記念日ではないのですが、“カナダ先住民族迫害の歴史”について考えるコミュニティー・イベント・デイで、カナダ政府は毎年この日、就学児童や教師、学校スタッフにオレンジのシャツを着てイベントに参加する事を推奨しています。
我が家の子供達も、昨日はオレンジ色のシャツを着て登校し、カナダ先住民族の迫害の歴史を学んで来たようです。



 このオレンジシャツ・デー、実は2013年から始まった新しい取り組みなんです。きっかけは『(悪名高き)レジデンシャル・スクールの生き残り』であるフィリス・ジャック・ウェブスタッドさんが語った「レジデンシャル・スクールに連れていかれた初日に、着ていたオレンジ色のシャツを取り上げられた」という実体験からでした。
この話に出てくる“レジデンシャル・スクール”とは何なのか、私がその内容を初めて知った時「もしも自分の子供達がこんな所に送られたら・・・」と思うと、自然と涙が出てきたのを覚えています。


 「レジデンシャル・スクール」とは、1800年代後半にカナダ政府の『先住民族同化政策』の下、クリスチャン教会主導で各州に設置された、強制的な“先住民族矯正施設”です。「同化政策」とは“先住民族の子供達から自身のアイデンティティーを抹消し、カナダ社会(白人社会)と同化させる”という事を目的とした政策でした。先住民の子供達は就学年齢になると親元から強制的に引き離され、意図的に地元から遠く離れた全寮制のレジデンシャル・スクールに送られました。
当時、先住民族は先住民居住地域から出る事に制限が掛けられていたため、両親がレジデンシャル・スクールに送られた我が子に面会できる機会は、ほぼありませんでした。そして学校に送られた子供たちは、先住民族文化排除のために自分たちの言語で喋る事は許されず、英語/仏語で話す事を強要されたのでした。


 許しがたいことに、多くの学校では子供たちに対して肉体的・精神的・性的虐待が横行し、卒業後に心的ストレス障害を発症したり、自殺者を多く出すなどしました。最初にレジデンシャル・スクールが開校した1870年代から最後のレジデンシャル・スクールが閉鎖された1996年までの約120年の間、学校に送られた先住民族の子ども達は約150,000人。その内の3,200人〜6,000人の子供達が学校関連での死を遂げています。
2008年6月初頭、レジデンシャル・スクール生存者7000人の声明を基に『Truth and Reconciliation Commission(真実と和解委員会)』が発足、そして彼らによってレジデンシャル・スクールの実態が発表されました。その9日後の6月11日、当時のカナダ首相スティーブン・ハーパーは、カナダ政府のこれまでの行いについてカナダ先住民族の方々に公的に謝罪を申し入れました。今現在、カナダ政府は先住民族への補償、優遇措置等を行い、学校教育の場では“カナダ史の汚点の一つ”として『先住民族迫害・同化政策』を子供たちに教えています。オレンジシャツ・デーは、特にその問題に対して学校で深く考える日となりました。
生まれてまだ6年目の新しいコミュニティ・イベント・デーですが、長く続いて欲しいと思っています。


2019年10月01日(火) written by Saori from (カナダ)
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