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ミラノの夏はラファエル前派展を堪能する

ミラノの夏はラファエル前派展を堪能する
ミレイの「オフィーリア」

 2019年6月19日からミラノ王宮博物館で『ラファエル前派・愛と希望』展が開催されています。日本でのラファエル前派の人気は高いものがありますが、ここイタリアでは認知度はあまり高くなく、今回の展覧会では約80点の作品展示がありますが、この規模のラファエル前派展はミラノでは初めてのことになります。

ラファエル前派というのは19世紀中頃、イギリスで生じた芸術家集団。ラファエル前派は、ルネサンス期の巨匠ラファエロの、それ以前の素朴な初期ルネサンスやフランドル美術を模範として、ありのままの自然を正確に写し出し表現しようとしました。当時のイギリス美術界ではアカデミーと呼ばれる権威的かつ伝統重視の勢力が強く、形骸化した形式美を求めるアカデミズムに反発する形で、ラファエロ以前の素朴な美術に立ち返ろうとしたのです。1848年、当時の王立アカデミーの学生3人、ミレイ、ハント、ロセッティがミレイの両親の家で「前ラファエロ兄弟団(ラファエル前派)Pre-Raphaelite Brotherhood」を結成しました。

ミラノの夏はラファエル前派展を堪能する
ロセッティの官能美を堪能する

 ラファエル前派の特徴として、戸外での制作などを通して、鮮やかな色彩で明暗の弱い画面に自然の細部までをリアルに描き込んでいるという点があります。今回のミラノでの開催で印象に残ったものをご紹介しましょう。

まずはラファエル前派のリーダー、ジョン・エヴァレット・ミレイの「オフィーリア」です。この絵はとても有名なので、どこかで一度はご覧になった方が多いかと思います。シェイクスピア『ハムレット』の悲劇の女性オフィーリアが主題です。こうした幻想的な場面を構成しながら、現実の風景を表現。ミレイの才能が凝縮されたような作品です。




ミラノの夏はラファエル前派展を堪能する
ほとんど人がいないので
ゆっくり鑑賞

 次にダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ。ロセッティは恋愛スキャンダルを何度も引き起こしたようですが、その情熱的な感じが作品にもよく表れていると思います。美しい女性の半身像、豊かな髪の流れ、肌の輝き、豪華な衣の襞などによって女性の官能的な魅力が追求されているようです。それは鑑賞者の好奇心を掻き立てるキッカケになり、そこに魅了されます。

またラファエル前派は詩などからその題材を得て、甘美で幻想的な世界を創り上げていきます。ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの「シャロットの乙女」もまた有名な作品の一つ。詩人テニスンがアーサー王伝説を下敷きにして書いた短編詩を主題に描いた作品です。白いドレスを身にまとい、絶望のうちに舟を繰り出す様子が描かれていて、このなんとも言えない表情に惹きつけられます。


ミラノの夏はラファエル前派展を堪能する
ウォーターハウスの「シャロットの乙女」

 このラファエル前派展、2019年10月6日まで開催しており、イタリアの祝日8月15日の聖母被昇天の日も開館しているとのこと。8月の暑いミラノで、涼を求めながら美しく抒情的な絵画を鑑賞してみるのはいかがでしょうか。ほとんど人がいないので、ゆっくり鑑賞できること請け合いです。


2019年08月13日(火) written by Maliarda from (イタリア)
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