戦後80年だった2025年終盤に見た、アニメ映画「ケンスケの王国（Kensuke's Kingdom）」

マイケル・モーパーゴ
『Kensuke's Kingdom
（ケンスケの王国）』

　11月中旬の週末、夕方に何となくイギリス公共放送ＢＢＣをテレビで見ていたら、『Kensuke's Kingdom（ケンスケの王国）』という映画が放送されていました。
　タイトルから日本発の作品かと思ってしまいそうですが、実は英国の児童作家マイケル・モーパーゴ（Michael Morpurgo）による同名作品が原作となったアニメ映画。児童文学がアニメ映画になった、となると楽しい内容かと思いきや（実際2024年の夏休み、英国とアイルランドで上映されていましたし）、心にずーん…と来る内容でした。

　ストーリーは、失業してしまった両親が良い機会（？）とばかりに、二人の子どもたちを連れてヨットで世界旅行することを決めます。小学生の少年マイケルは、大好きなボーダーコリーの愛犬ステラが一緒に来られないので世界旅行にあまり乗り気ではありません。そこでマイケルは親に内緒で飼い犬のステラをこっそり船に乗せて一緒に連れて行くことに。

　しかしある大嵐の日、親の制止もきかず、隠していたステラを助けにデッキへ出てしまったことから、ステラともども荒れ狂う海へ投げ出されてしまいます。

　なんとか一命をとりとめたマイケルとステラが流れ着いたのは、恐らく東南アジアのどこかの無人島。その小島には東洋人の高齢男性が一人で暮らしていました。第二次世界大戦中は海軍として軍艦に乗っていたその老人ケンスケは長崎出身。長崎の原爆でケンスケの妻子の生死は分からず、自分の軍艦は爆撃されて、この島に一人流れ着いたよう。

　そんなマイケル少年と日本の元軍人ケンスケとのやり取りや暮らし、島に来る密猟者から動物たちを守る様子などが描かれていました。

　話は創作ですが、作者のモーパーゴによれば、昔ラジオか新聞で見聞きした、島のジャングルに27年ほど潜んで生活していたある日本の残留日本兵のニュースから、この話を思いついたそうです（終戦後も、グアム島のジャングルに28年潜伏していた残留日本兵、横井庄一さんのことかな？）。

　作品の中で英語は話さず日本語のみでマイケル少年と交流していたケンスケの声は、渡辺謙さんが担当されていました。
　
　ちょっと悲しい＆もやもや残るラストだったのですが、原作の方では後日談があり、ケンスケの妻子は戦争を生き延びて、マイケルは10数年後にケンスケの息子と日本で会う、という展開になっています。

　原作は8歳～12歳向けの児童文学ですが、一度ちゃんと原作を読んでみたいなあと思わせる映画でした。