ワーホリネット | ワーキングホリデーとは
20191009478

英国のYouth Mobility Schemeで制限される「医師」「歯科医」「スポーツ」、2019年ルール改定でより厳しく

英国のYouth Mobility Schemeで制限される「医師」「歯科医」「スポーツ」、2019年ルール改定でより厳しく

 UK Tier 5 Youth Mobility Scheme(YMS)はWork(就労)を主体とした就労ビザなので、観光を主体としたワーキングホリデービザとは全く異なります。

よってYMSでは、就労を目的に滞在をし、その合間にTourism(観光)したりまたはStudy(学校)に行ったりすることは可能ですが、休暇や学業をメインに英国に滞在をしてはいけないことになってます。

このYMSビザでの就労はアルバイト程度の一時的な労働ではなく、フルタイムの就業またはSelf-employed (自営業)であり、「一部の職種」を除いてあらゆる専門職に正社員として就くことを許可しています。
「一部の職種」については制限があり、YMSビザのPolicy guidance(概要)に明記されています。


 そこには、Conditions of leave (英国滞在条件)として、
They can do any work that complies with UK and European Union laws, directives and regulations with the exception of working as a professional sportsperson, including as a sports coach and a doctor or dentist in training.
という一文があり、YMSの申請者は、「スポーツコーチを含むプロスポーツ選手または研修中の医師または歯科医として働くことを除いて、英国および欧州連合の法律、指令、規制に準拠したあらゆる仕事を行うことができる」としています。

Tier 5 (Youth Mobility Scheme) Policy guidance
https://www.gov.uk/government/publications/guidance-on-visa-applications-under-tier-5-youth-mobility-scheme


英国のYouth Mobility Schemeで制限される「医師」「歯科医」「スポーツ」、2019年ルール改定でより厳しく
BRPに記載されている就労制限


さらに説明を読むと、医師または歯科医についての定義は、
A Tier 5 (Youth Mobility Scheme) migrant may only work as a doctor or dentist in training when they have a degree in medicine or dentistry from a UK institution that is UK recognised or listed body, and holds a sponsor licence under Tier 4.
とされていて、英国で認定されている機関で、かつTier4(学生ビザ)でスポンサーライセンスを保有している英国の機関で医学または歯科の学位を取得している場合にのみ、研修医として医師または歯科医の職に就くことができるとあります。
YMSでは医師または歯科医について全部が不可ということではなく、条件を満たせば就労が可能になっていることを説明しています。

 しかしこれらの定義内容は抽象的なので、間違った解釈をして英国で違法に就労しないように、別途、Rule(規則)が設けられています。
英国政府はすべてのビザを対象にImmigration Rulesを発布しており、そこに「詳しい定義」を記載していますが、毎年改定があるのでビザ申請する際には該当箇所に変更がないか確かめておく必要があります。

Immigration Rulesに記述されている「プロスポーツ選手(コーチを含める)」についての定義は、2019年に入って4度の改定があり、最新の2019年10月7日施行のルール改定によりさらに厳しくなっています。
「スポーツ」の就労に関しては、現在、Tier 1 (Exceptional Talent)、Tier 1 (Entrepreneur)、Tier 1 (Investor)、Tier 4、Tier 5 (Youth Mobility Scheme)ビザで、プロスポーツ選手(コーチを含める)を制限しており、その具体的内容は、Immigration Rulesの記述によれば、「チャリティーイベントでアマチュアとして行う場合を除き、有給、無給を問わず、あらゆるレベルのスポーツでスポーツマンまたはコーチとしてサービスを提供する場合」としています。
A “Professional Sportsperson”, is someone, whether paid or unpaid, who is currently providing services as a sportsperson, playing or coaching in any capacity, at a professional or semi-professional level of sport.
また、Amateur(アマチュア)の定義が併記されており、「アマチュアとは、個人的な楽しみのためだけにスポーツや創造的な活動に従事し、その活動から生計を立てようとしない人のことで、これには、チャリティゲームでプレイしたりコーチしたりする人も含まれます。」としています。
An “Amateur” is a person who engages in a sport or creative activity solely for personal enjoyment and who is not seeking to derive a living from the activity.

ここでいう、チャリティーゲームとは、癌や障害をもった子供や成人などを対象にイベントを行うことを指していて、一般の健常者や選手育成の為の子供や成人を含めません。

つまり2018年12月以前の「プロスポーツ選手(コーチを含める)」については、プロフェッショナルでなければ休日を利用したフットボール教室で子供たちに技術指導をする程度のことは可能としていましたが、2019年以降の現在ではそれも不可ということになっています。
スポーツコーチに関しては、将来、英国を代表する選手になるかもしれない子供や成人を、正当な「許可」を得ていない外国人によって勝手に指導してもらいたくないという英国の内情があります。

Immigration Rules
(“Amateur”と “Professional Sportsperson”の記述はInterpretationの後半)
https://www.gov.uk/guidance/immigration-rules/immigration-rules-introduction


スポーツマンまたはコーチとして英国で働く正当な「許可」を得るには、今のところTier 2 Sportsperson visa、Tier 5 Creative and Sporting visaとなっています。

Tier 2 Sportsperson visa (3 years, maximum stay of 6 years)
https://www.gov.uk/tier-2-sportsperson-worker-visa


Tier 5 Temporary Worker - Creative and Sporting visa (12 months)
https://www.gov.uk/tier-5-temporary-worker-creative-and-sporting-visa



 YMSの就学(語学学校等への通学)については、英語のスキルを上達させたいという目的でTier 5 (Youth Mobility Scheme) を使い英国に滞在するのは間違っていて、その場合はTier 5ではなく、Tier 4(学生ビザ)またはShort-term study visaを取得して滞在しないといけないことになっています。
確かにYMSでも就学が認められていますが、それはあくまで就労に支障が出ないようにサポートする範囲であり滞在期間の2年間を全て学業に充てられる意味ではありません。

Short-term study visa
https://www.gov.uk/study-visit-visa

Tier 4 Student visa
https://www.gov.uk/tier-4-general-visa


近年、少子高齢化でNHS(保健サービス)やState Pension(公的年金)などが財政難に陥る英国政府は外国人の労働力に期待するようになり、IHS※の他、国の財源を補完するためにNon-settlement visa applicants(非定住者)から高い税収を上げる為の施策を練っています。
2008年11月に英国政府がビザの改定を行いワーキングホリデービザ制度を廃止したのもその為で、ワーキングホリデーによるアルバイト程度の一時的な労働による税収よりも2年間の正規就労による税収のほうが多額の歳入を確保できます。それがYMSがワーキングホリデーに代わって誕生した経緯であり、YMSの本来の趣旨です。
よって、YMSではアルバイトよりも正規就労(または自営業)による滞在が推奨されていて、もし、英国滞在中に無職で納税記録がない場合は、不法滞在者と同じ扱いになり、罰則が科せられたり、次回異なるビザを取得しようとする際に審査が非常に厳しくなるリスクが生じます。
YMSはワーキングホリデーと勘違いしている人は完全な間違いなので、早めにその考えを修正しておく必要があります。

英国で滞在する際には、ビザの本来の趣旨や目的、及び就けない職種を十分理解し、Immigration Rulesに違反しないように留意する必要があります。




※Immigration Health Surcharge(IHS)とは、2015年4月に英国で施行された非EEA(欧州経済領域)国籍者がビザを取得して6ヵ月以上英国に滞在する場合に英国国内の公共医療サービスを使用するための費用としてビザ申請時に納めなければならない費用。
当初、一人当たり年間£200(Tier 4とYMSは£150)だったのだが、2018年1月から2倍の一人当たり年間£400(Tier 4とYMSは£300)になった。YMSは2年間のビザなので現在2年分の£600。
IHSによる歳入は、主にNational Health Service(NHS) 国民保健サービス(英国の国営医療サービス事業)の財源に補填される。

2019年10月09日(水) written by ワーホリネット from (イギリス)


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