観光客による損傷被害に悩む,北アイルランドのユネスコ世界遺産 <br> | ワーキングホリデー通信
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観光客による損傷被害に悩む,北アイルランドのユネスコ世界遺産


【写真:ユネスコ世界遺産
「ジャイアンツ.コーズウェイ」
が危機に…】

北アイルランド(英国領)の人気観光地は色々ありますが,その中でもジャイアンツ.コーズウェイ(Giant's Causeway)は,1986年にユネスコ世界遺産登録もされていることから,特に良く知られた名所でもあります.昨年2024年には65万人近くの人がここを訪れたそう.

昔北アイルランドに在住していた時,初めてジャイアンツ.コーズウェイに来た私ですが,4万本ものさまざまな高さの黒い玄武岩の六角柱がずらっと並ぶ不思議な風景は,とても自然が作り出したものとは信じられないほどでした.


さらにこの異世界的な風景が,約5000万〜6000万年前の第三紀の火山活動によって形成されたとなると,もはやロマンしか感じません(笑).

日本語に直訳すれば"巨人の土手道"といった意味のジャイアンツ.コーズウェイですが,何でも伝説によると,アイルランドのフィン.マックール(Finn MacCool)という巨人がスコットランドに住むライバルの巨人,ベナンドナー(Benandonner)と対決するために作ったのだそうで,そこからこの名前がついています.


そんな貴重な世界遺産であるジャイアンツ.コーズウェイですが,現在危機的な状況に陥っています.

というのも英国や欧州,米国,そしてその他世界中からここを訪れた後,訪問した証として岩の境目や亀裂部分に硬貨を差し込んで帰る人が後を絶たず,そのためジャイアンツ.コーズウェイの美観のみならず,物理的な損傷が深刻な問題となっているからです.

岩に残された硬貨は海の潮水であっという間に錆びつき,元の厚さの3倍にまで膨張しては岩に大きな圧力をかけて崩落を引き起こす結果となっています.

それにしても来た人たちは,なぜ硬貨をジャイアンツ.コーズウェイの岩の隙間にねじ込んで行くのでしょうか?私は知らなかったのですが,どうやらジャイアンツ.コーズウェイに硬貨を残していくと(寄贈という意味か?),その人に幸福が訪れる…という不可解な伝統(?)が広がっているからだとか.


ツアーガイドがそうするよう推奨していた,なんてウワサもあるようですが,もしそれが事実ならとんでもない話です.

現在,貴重な自然.歴史的建造物の保護.保全活動をしている英国のナショナル.トラストを中心に,錆びついた古い硬貨を除去している最中ですが,もし今後ジャイアンツ.コーズウェイに行かれる予定がある方は,くれぐれも硬貨を岩に挟んで帰らないように,そして同行の人たちがそういった行動をしていたら注意をしてあげてくださいね.



2025/08/12(火) Uisce
No.7105 (アイルランド)

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