
 私のパリの友人や知人の中には40歳を超えてから出産した人が数人います.日本と同じく晩婚化が進むフランスにおいて,私の周りの多くの友人は35歳を超えてからの出産といっても過言ではありません.
そういえば,ニコラ.サルコジ元大統領の奥様のカーラ.ブルーニさんも43歳で第二子をもうけられましたね.
近年は日本と同様に医学の発達で随分高齢出産が増えてきています.一方,同性カップルにおいては養子縁組は以前から認められていたものの,同性カップルの女性が人工授精や体外受精の権利を得られるまでは他のヨーロッパ諸国と比べて遅れをとっていました.
 このため同性カップルは,ベルギーやスペイン,ポルトガルなどの近隣国に渡り,多額の費用をかけて不妊治療を受けるフランス人女性も多かったのが現実です.
私も実際に卵子を凍結するためにポルトガルに渡った女性や,レズビアンのカップルが数回に渡ってスペインに行ったという話を伺って,大変な苦労したのだなぁと驚いたのを覚えています.
 2021年にようやく制定された新法のおかげで,43歳以下のすべての女性が体外受精(IVF)や人工授精をはじめとするさまざまな不妊治療を受けられ,その費用はフランスの医療サービスでまかなわれるようになりました.
厳密に言うと体外受精は4回まで無料で受けられます.ただ,婦人科医やエコーなどにかかる費用は発生します.
治療自体も,肉体的.精神的に辛いため経済的負担が無くなったのは大きいでしょう.
この新法により同性カップルでもパートナーを持たなくても子供を望むシングルマザーが不妊治療を受けられるようになりました.また,ドナーの精子を使って妊娠した子供は,成人した際にドナーの身元を知ることができます.
 2014年にフランスの合計特殊出生率が2.0を切って以来その率は下降の一途を辿っているものの,2018年のフランス保健省のデータでは,不妊治療を受けた件数は15万件に上り,不妊治療を経て生まれた子どもの数は約2万5000人と,出生数全体の約3%に当たるそうです.
医療の発達において出生率の低下に歯止めがかかるか日本においてもフランスにおいても今後注目されます.