減り続けるアイルランドのパブ <br> | ワーキングホリデー通信
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減り続けるアイルランドのパブ


去る10月29日,アイルランドなど欧州の国々は再び「冬時間」となり,日本とアイルランド間の時差も9時間となりました.そうなると日の暮れるのも早くなり,冬まっしぐらといった感じです.

寒い季節になると恋しくなるのはパブ.暖炉の前で古ぼけたソファーに座り,気の置けない友人たちとお酒とフィンガーフードをお供におしゃべりしていると,時間はあっという間に過ぎていきます.

ところがアイルランドの飲料産業を統括する「Drinks Industry Group of Ireland」によれば,年々パブは減少しており,特に地方のパブの減少率は危機的状況なのだとか.



調査によれば,2005年から2022年の間で5軒に1軒のパブが閉店しているそうで,特にリムリック州(Co.Limerick)やコーク州(Co.Cork),リーシュ州(Co.Laois)では30%のパブが廃業となっているそうです.同じパブでもダブリンのパブ廃業率は3.4%だそうですので,観光客が良く訪れる地域か否かでパブの運命が分かれているように思います.

パブは家族経営のところが多いですので,例えば新型コロナの時は相当の打撃を受け,多くのパブが経営困難となり閉店してしまう原因となりました.



アイルランドでパブといえば,いわば地域コミュニティの"リビングルーム"的な場所でした.何か話題やゴシップなど,何でもパブで人々と交流できる,特に鄙びた村では貴重な存在だったのですが,インターネットが暮らしの中で当たり前となり,直接顔を合わせて話さずともSNSやワッツアップ(WhatsApp/日本のLINEのようなもの)で容易にいつでも会話ができます.

そんなわけで,新型コロナが拍車をかけたのもありますが,パブでみんなとお酒,より"家飲み"が安くて楽ちん,といった生活に変わっていきました.

さらにパブの存続を危機的状況にしている理由として,アイルランドにおける物品税の高さも挙げられています.物品税とはお酒などの嗜好品にかけられる税ですが,アイルランドの場合,蒸留酒に対する物品税はヨーロッパでフィンランドとスウェーデンに次いで3番目に高く,ビールもフィンランドの次に高い物品税となっています.そしてワインにいたってはEU圏内で1番高い物品税がかけられているのです.



このことからDrinks Industry Group of Irelandは,これらの酒類の物品税引き下げを求めているそうですが,確かにパブといえば有名なアイルランドの文化.慣習の一つ.パブでギネスを飲み,アイルランドの伝統音楽を聴きに来たい観光客は多いでしょうから,都市部だけではなくアイルランド全土でパブの経営が少しでも楽になってゆくと良いな,と思いました.



2023/11/07(火) Uisce
No.6939 (アイルランド)

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