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ハープがアイルランドのシンボルになったわけ


【写真:ユーロコインに描かれたハープ
(EUROPEAN CENTRAL BANK)】

世界の国々では,それぞれいわゆる「シンボル」を持つ国が多いと思います.例えば動物や鳥類,植物,天体などをモチーフとしたシンボルを国の象徴として用いたりしています.日本だと菊や太陽(日の丸)がそうですよね.

アイルランドではハープが国のシンボルなのですが,世界中を見ても楽器を国の象徴としている国はなく,アイルランドだけではないかと思います.

そんなわけで,アイルランドに来ればハープのロゴをあちらこちらで発見することとなります.楽器の演奏が好きな私にとって,楽器が国のシンボルなんて羨ましいです(笑).
アイルランドの公的機関や文書,パスポート,ユーロのコインなど様々なところで見かけるハープですが,そもそもなぜアイルランドの公的シンボルがハープとなったのでしょうか.



【写真:トリニティ.カレッジ図書館の
ポスター】

この国ではもともと中世時代より,ハープが人々の暮らしの中心にあり,ハープ奏者の社会的地位も高いものでした.
その後何世紀もの長い間英国支配にあった後,現在のアイルランドの前身となるアイルランド自由国(Irish Free State)が1922年に設立.その時アイルランドに現存する最古のハープ,『ブライアン.ボルー』ハープをシンボルとすることにしました.

『ブライアン.ボルー』ハープは14世紀に作られたハープで,今はダブリンのトリニティ.カレッジ図書館に展示されています.ちなみに名前になっているブライアン.ボルー(Brian Boru)は,941年に生まれ,1002年にアイルランドの上王となった人物です.



【写真:ギネスの公式ロゴもハープ.】

ところがハープを国の象徴とするにあたり,一つ大きな問題がありました.

実はその50年ほど前,すでにハープのロゴはある人物によって商標登録されていたのです――そう,ギネスビールの創業者アーサー.ギネスがその人.ギネスビールといえば,金色のハープがおなじみですが,1876年にギネスのハープデザインが登録されていたのだとか.

そこでアイルランド自由国は,ギネスの登録商標を侵害しないように,ハープの向きを逆にして使用しなければならなかったのだそう.確かに,ギネスのハープは右側を向いていますが,アイルランドのものは左側を向いていますね!



【写真:現代のアイリッシュハープ.
「レバーハープ」「ケルティックハープ」
と呼ばれることも.】

毎日のアイルランドでの生活でハープを見かけることがあったら,アイルランドにおけるハープの歴史についてもちょっぴり想いを寄せてみるのも面白いかもしれません.




2023/05/23(火) Uisce
No.6902 (アイルランド)

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