![]() 【写真:3万枚のピエトラ.フォルテが 曲線を描く美しい空間にウットリ.】 |
ミラノのモンタネッリ庭園の真ん前,コルソ.ヴェネツィア52番地にオープンした「ルイージ.ロヴァ―ティ財団/エトルリア博物館」に行ってきました.
博物館の建物自体は1871年に建てられた瀟洒な邸宅ですが,2015年に邸宅の相続人が売却した後,財団を設立.同財団が所蔵しているエトルリア出土品のコレクションなど芸術作品を展示することを目的として,建物全体の修復と拡張をして,コロナ禍で一般公開が延期されていたのですが,2022年の秋めでたくオープンということになりました.
博物館には裏庭とカフェ.ビストロを備え,以前の瀟洒な邸宅としての雰囲気を受け継ぎながら現代的に改装されています.
展示品は上階と地下の2フロアにまたがり,上階には現代アートの展示室,そしてこの博物館の目玉であるエトルリア出土品の展示室は地階にあります.
![]() 【写真:内部はまるでエトルリアの墳丘のような空間.】 |
エトルリアとはイタリア中部の歴史的かつ地理的地域のことであり,伝統的にアルノ川とテヴェレ川,そしてティレニア海の間に位置し,現在のラツィオ州の北部,ウンブリア州の西部,トスカーナ州の大部分の地域を指します.この地域に紀元前8世紀から紀元前1世紀ごろ多くの都市国家があり,そこに高度で洗練されたエトルリア文明が栄えました.
ティレニア海というのも,紀元前8世紀にピサ近くのアルノ川河口まで広がった地域に住んでいたエトルリア人を,当時のギリシャ人が彼らをティレニという名前で呼んだことが由来になっているそうです.
![]() 【写真:骨壺や石棺も様々で, 色がわずかに残っているものも!】 |
入口には紀元前7世紀の大きな壺(食料の保管に使用されていた)がお出迎えしてくれ,気分が一気に上がります…地階に行くとそこはもう別世界のようになっていました.エトルリア出土品がまるで浮いているように見える展示ケースが並び,訪問者の注意が自然とそこへ集中するように最新照明が絶妙に調整されています.エトルリアの貴族たちは,墳丘を伴う墓地に様々な副葬品とともに埋葬されたので,そうした装飾品も展示され,また何より博物館自体がその墳丘をイメージしたような造りで,流れるような曲線が本当に美しいのです!
建築家の話によると,従来の「箱型」の美術館を作るつもりはなかったということ.古代からアートは人々の間,家庭や公共の場所,または神聖な場所にあることが普通だったので,そういう体験をこのエトルリア博物館で訪問者たちにしてもらいたいのだそうです.
そこで全てを曲線にして,時間の感覚を継続的な流れとして復元する空間が作られました.サンドブラスト(砂吹き)加工された 3万枚のピエトラ.フォルテ切石で作られています.ピエトラ.フォルテというのは,フィレンツェの建築物によく使われる石の種類で「強い石」という意味.もともとは明るい土色なのですが,ピカピカの大理石と比べると少し素朴な石…でもそれが加工されて層状になると,こんなに美しい空間に変わるのです.
![]() 【写真:エトルリア博物館. 建物自体がすでにアート!】 |
エトルリア文明はまだ謎めいた部分がありますが,ギリシアの都市国家に似た社会形態だったとか.ただ個々の都市の文化は必ずしも同一ではなくて,埋葬様式も多様.火葬,土葬ともに行われ,石棺,陶棺,骨壺も色々な型がありました.色が残っている石棺もあるので,極彩色のカラフルな石棺だったに違いありません.
博物館の最後のお楽しみであるブック.ショップには,エトルリア関連の本と素敵な絵本が並んでいました.エトルリア関連本は普通の本屋ではなかなか見つからないので非常に貴重なブック.ショップです.また今後は,エトルリア出土品の展示や現代作品の貴重なコレクション展示のみならず,会議や研究セミナーなどを開催していく予定だそうで,それも楽しみです.