意外に知られていない(かも?),アイルランドの曲たち(後編) <br> | ワーキングホリデー通信
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意外に知られていない(かも?),アイルランドの曲たち(後編)


【写真:私がアイリッシュハープで習った教本には,
『ジョン.ライアンのポルカ』ではなく,
『ジョン.イーガンのポルカ』になっていました.】

先月(2022年5月掲載)に引き続き,今回も『意外に知られていない(かもしれない),アイルランドの曲』をご紹介したいと思います.
後編では,2曲の伝統曲を選んでみました.

(意外に知られていない(かも?),アイルランドの曲たち(前編)1曲目)

前回から数えて2曲目,それは『ジョン.ライアンのポルカ(John Ryan's Polka)』です.

曲名だけ聞くと,あまり馴染みないよ〜,という方が多いと思いますが,あの名作『タイタニック(1997年)』の映画の中で,主人公のジャックとローズが3等客室内で,アイルランド人らしきミュージシャンたちの演奏に合わせ,軽快に踊っているシーンの曲.



【写真:アイルランドのみならず,
世界中で人気のケリーゴールド
(Kerrygold)のバター.
https://kerrygold.com/ie/】

また,アイルランドは乳製品がクリーミーで美味しいことでも有名ですが,そんなアイルランドの乳製品メーカー,「ケリーゴールド(Kerry Gold)」のドイツ向けTVコマーシャルでも,昔このジョン.ライアンのポルカが使用されたことがありました.

私自身,この曲をケルティックハープ(アイリッシュハープ)で習ったのですが,その時はなぜか違うタイトル,『ジョン.イーガンのポルカ(John Egan's Polka)』として教わりました.

アイルランドの伝統音楽ではよくある話で,同じ曲なのに複数のタイトルがついていたり,逆に全く違う曲なのに,同じタイトルがつけられていたり…なんてことは当たり前(笑).アイルランドの伝統音楽は,基本的に楽譜がなく,いわゆる"耳コピ"で学んでいくのが常だったので,時の流れと同時にタイトルや曲も流動的になっていったのでしょうね!


さて,3曲目にご紹介するのは『サリーガーデン(Down by the Salley Gardens)』.

まだ私にとってアイルランドが未知の国だった学生時代,詩の授業で『サリーガーデン』が出てきたのですが,タイトルを初めて見た時は,てっきり「サリーという名の女の子の庭」についての詩だと思っていました(笑).

確かに若い女性は詩の中に登場しますが,はたして"サリー(Salley)"とは,アイルランド方言で『Sallow (ヨーロッパヤナギ) 』を意味し,詩の作者は1923年にノーベル文学賞を受賞した,アイルランドが誇る詩人イェイツ(William Butler Yeats).

抒情的な美しい言葉で書かれた詩ですが,内容は哀歌.ヤナギの庭で出会った,手足が雪のように白い美しい若い女性に恋をした青年が,好きすぎて恐らくぐいぐい押しすぎたのでしょう,最後には相手の女性にドン引きされ失恋……といった内容です(悲).


その後,既に存在していた別のアイルランド伝統曲『The Maids of Mourne Shore』のメロディがつけられ,今日に至ります.さきほどご紹介した『ジョン.ライアンのポルカ』のように,『サリーガーデン』も同じメロディなのに曲名が複数ある,アイルランド伝統音楽では"あるある"な一例です.

アイルランドで,日本で,そして他の国でアイルランドの伝統音楽を耳にしたり演奏することがあれば,是非その背景も頭に浮かべてみれば,よりこの国のアイリッシュ.チューンが面白くなるかもしれませんヨ♪



2022/06/21(火) Uisce
No.6823 (アイルランド)

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