ミケランジェロの3つのピエタ 画期的な展覧会 フィレンツェ<br> | ワーキングホリデー通信
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ミケランジェロの3つのピエタ 画期的な展覧会 フィレンツェ


【写真:ヴァチカンのピエタ像】

フィレンツェのドゥオーモ付属美術館で8月1日まで開催中の『ミケランジェロの3つのピエタ』展.ローマ教皇フランチェスコも出席する会議「Mediterraneo frontiera di pace 2022/平和の地中海フロンティア2022」の機会も兼ねて企画されたそうですが,なんと3つのピエタが一堂に会して比較されるのは初の試みなのです!

ピエタというのは聖母子像の中の,十字架から降ろされたキリストを抱く聖母マリアの姿を彫刻や絵にしたものを指します.イタリア語で慈悲とか哀れみという意味で,そうした気持ちを呼び起こすような作品を何世紀にも渡って芸術家たちは作ってきました.





【写真:3つのピエタが一堂に会する初の展覧会】

なかでもミケランジェロのピエタは非常に有名で,彼は生涯に3つのピエタ像を制作していますが,一番有名なのはヴァチカンにあるミケランジェロ24歳の時の作品でしょうか.そしてフィレンツェにあるバンディーニのピエタと晩年,死ぬ間際まで彫っていたと言われるミラノにあるロンダニーニのピエタ.

これらが隣り合わせに配置され,ミケランジェロの50年間に及ぶ芸術の進化と,彼の若い頃からの精神的な成熟度を見るという,初めての,なおかつ非常に貴重な展覧会なのです.ヴァチカンのピエタとミラノのロンダニーニのピエタは(残念ながら)精巧に作られた石膏模型ですが,これだけ身近で隅々まで鑑賞できる機会は最初で最後のことかもしれません.





【写真:フィレンツェの
バンディーニのピエタ像】

ヴァチカン版ピエタの聖母の胸元にはミケランジェロの名前が刻まれていて,若い彼の大きな野心が見え隠れしていますが,70歳ぐらいの時のフィレンツェ版ピエタでは聖母子だけでなく,キリストを抱えるニコデモやマグダラのマリアも一緒にいるのが特徴.そしてこのニコデモはミケランジェロの自画像ではないかと言われています.そして88歳のミケランジェロが死ぬ間際まで彫っていたというミラノ版ピエタは途中で構想を変えたのか,キリストの手前にある腕だったものが切り離されています.フィレンツェ版とミラノ版のピエタはどちらも未完.特に晩年のピエタはノミの跡まで生々しく残っていて,ミケランジェロの制作にかける情熱を感じます.





【写真:ミラノのロンダニーニのピエタ像】

ミケランジェロは自分の死が近くなった時,キリストの受難について深く瞑想し,この精神的な瞑想の結果がミラノのロンダニーニのピエタに繋がったのだとか.未完のそのシンプルで簡潔な美しさになんとも言えない気持ちになります.

今年の秋〜冬には,ミラノ王宮の新しく設計された場所で巡回展示の予定.



2022/04/26(火) Maliarda
No.6811 (イタリア)

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